今春に駅ビルがリニューアルしてグルメバーガーなど話題性のある飲食店が集まり、若い世代が増加している恵比寿。一方、2014 年 3 月に開業した「上越やすだ」は、喧騒から少し離れた徒歩 5 分の住宅街にあり、ゆったりとした L 字型けやきのカウンター席を中心に、和風モダンの内装で、大人が落ち着いて食事を楽しめる板前割烹です。
その名が示す通り、上越地方を中心とした新潟の食材を使った料理と、新潟の蔵元の酒をテーマにしているのが特徴です。母体は上越市にある冠婚葬祭の式場「やすね」で、創業 1894(明治 27)年、初代の安田音次郎氏が骨董商のかたわら甘味処を始め、やがて酒販売や、ウナギ屋などの飲食店を手がけるようになっていったそうです。東京では、恵比寿店の他に新橋銀座口店があり、また、今夏には新店「上越の恵 田喰 TAKU 銀座店」もスタートしました。
「お通しとして、小鉢と共に、土鍋で炊いたコシヒカリのご飯と一杯の日本酒を提供することで、店のコンセプトを表現しています。また、そのお酒の味をどう感じられるかによって、お客様の嗜好を推測する手がかりにもなっていますね」と話すのは、若女将を務める小林浩子さん。新潟県長岡市の出身で、元々は本店でカメラマンやウエディングプランナーを務めていたという異色の経歴の持ち主。
日々、料飲部門のスタッフと接するうちに、こちらの世界に興味がわき、転向を決めたのだそう。
「とはいえ、日本酒の知識はほとんどなく、現職に就く前に地元の系列店の居酒屋で研修をしました。にいがた酒の陣に行った時、蔵元の方たちが大変熱心に語っている姿を見て、日本酒というひとくくりのイメージではなく、1 本 1 本が主役であり、私はそれをきちんと理解して、お客様に正しく伝えなければならないと責任の重さを感じました。以来、蔵元を訪問したり、唎酒師の資格を取得するなど、今も日々勉強中です」。