近くに隅田川が流れ、下町の風情が残る蔵前。近年では“東京のブルックリン” と呼ばれ、個性的なカフェや雑貨店などが次々に登場しています。2016 年にオー プンした「 〼kuramae」もその1軒。縦1m、横5mほどの大きな紺色の暖簾が一際 目を引きます。
中に入ると、目の前には厨房をコの字に囲んだカウンター12 席。奥には日本酒の冷蔵ケースがあります。上の吊り棚は、桝をひっくり返したようなユニー クなデザイン。カウンターの前には目隠しやショーケースが一切なく、厨房の中が 客席からよく見えます。
「料理を安心して食べていただきたいので、このような内装にしました。物件を見に来た際、ちょうど近くの鳥越神社でお祭りをやっていて、その雰囲気が気に入り、 ここに決めました。事務所だった物件で、予算の都合でアルミサッシの引き戸をそのまま残して暖簾で目隠しをしたのですが、中の様子が見えそうで見えない感じが絶妙でいいと、地元のお客様から好評です。また、周辺にはゲストハウスが点在していて外国人のお客様も少なくなく、日本の居酒屋らしい設えに興味を持たれて来店す る方もいらっしゃいます」 と語る、店主の漆畑慎太郎氏。
神楽坂や護国寺の居酒屋で20年間料理人の経験を積み、途中、ニューヨークの和食レストランにも勤めました。 ニューヨークの店で同僚だったのが、女将の漆畑博子さん。結婚し、帰国した後 は会社員をしており、開業後も派遣社員として週3回会社勤めをしながら、店のサー ビスを担当。夫婦二人三脚で切り盛りしています。 「夫は普段からお酒をよく飲むので経験値も高いのですが、私はお酒が強くないの です。が、店に立つからには説得力を持ちたいと思い、唎酒師の資格を取得しました」 開業前に資格を取ったことで、酒器選びなどの際に専門的な知識が役立ったそうです。